日本弁護士連合会

会長声明集 Subject:2009-05-22
足利事件DNA鑑定書開示に関する会長談話

本年5月8日、東京高等裁判所は、当連合会が支援する足利事件について、弁護側推薦、検察側推薦の鑑定人のいずれも、被害者の半袖下着の精液痕に由来するDNA型と請求人の菅家利和氏のDNA型は一致しないとするDNA再鑑定書を弁護団に交付した。

DNA鑑定で不一致という結果となれば、アリバイの成立と同様、直ちに冤罪が証明される。本件における鑑定人両名の結論は、18年の間に極めて進歩した最新の技術や高い精度を持つDNA鑑定の結果に基づくものであり、菅家氏の冤罪は明白となったというべきである。したがって、当連合会は、裁判所に対し、速やかな再審開始決定を求めると同時に、検察官に対し、DNA再鑑定の結論を受け容れ、速やかに、刑事訴訟法第442条但書に基づき菅家氏の刑の執行を停止し、再審公判へ移行することを求める。

また、本件は、冤罪者であっても自白に至ってしまうという現実を改めて明白にしたものであり、取調べの全面可視化の要請は一層強まったというべきである。当連合会は、今後とも、自白の任意性、信用性の審査が正しく機能するよう、取調べの全面可視化を訴えていく。

今回の再鑑定の結果は、DNA鑑定が犯人の検挙だけではなく、冤罪者を救済する大きな武器になることも示している。当連合会は、2007年12月21日に「警察庁DNAデータベースシステムに関する意見書」を採択し、そこにおいて、冤罪を訴える者がDNAデータベースへアクセスする権利の保障を提言した。今後は、条件が整う限り、冤罪を訴える者のDNA鑑定の実施を保障する法制度の定立が急務であると考え、その実現に努力する。

2009年(平成21年)5月22日

日本弁護士連合会
会長 宮ア 誠

 

栃木県弁護士会

足利事件に関する会長談話
2009年(平成21年)5月26日
栃木県弁護士会 
会長 田島二三夫

  

 東京高等裁判所は、平成2年5月に栃木県足利市内で発生した幼女誘拐・殺人・死体遺棄事件(いわゆる足利事件)について、有罪判決が確定して服役中の菅家利和氏が求めている再審請求事件においてDNAの再鑑定を実施し、本年5月8日その再鑑定書を弁護団に交付した。弁護団からの報告によれば、弁護側推薦の鑑定人および検察側推薦の鑑定人のいずれの鑑定結果も、被害者の半袖下着に付着していた犯人のものと思われる体液のDNAの型と、菅谷利和氏のDNAの型が一致しなかったと結論づけているとのことである。
 
         ところで、菅家利和氏は、平成3年12月にDNA鑑定を決め手として足利事件の容疑者として逮捕されたが、DNA鑑定は、この事件を切っ掛けにして人の同一性を判断する手法として世に知られるようになった。しかし、当時はまだDNA鑑定は黎明期にあり、その精度には大いに問題があったが、あたかもそれだけで犯人性を認定できるかのように受け止められた。その後、DNA鑑定の精度は格段に進歩したが、他方で、DNA鑑定はあくまでも有力な情況証拠の一つに過ぎず、DNA鑑定の結果が一致しても、鑑定資料採取の方法が適正になされたかなどの問題もあり、DNAの型が一致しただけでその人物を犯人と認定することは危険であることが認識されるようになっている。その反面、DNAの型が一致しなかった場合には、アリバイが成立した場合と同様に、その人物が犯人ではない可能性がきわめて高い。
 
 足利事件の再審請求事件における両鑑定人の結論は、18年の間に格段に進歩した技術により高い精度を持つ最新のDNA鑑定によるものであり、被害者の着衣の体液と菅谷利和氏のDNAの型が一致しなかったことにより、菅家利和氏が犯人ではないことが明白となった。
 従って、当会は、裁判所に対し、速やかに菅谷利和氏に対して再審を開始する決定をすることを求める。また、検察官は、DNA再鑑定の結論を受け容れ、直ちに菅家利和氏の刑の執行を停止して釈放するとともに、再審公判へ移行することを争わないよう求める。
 
 なお、足利事件では、菅谷利和氏は取調において犯行を自白しているが、このことは、密室の取調では犯人でない者が犯行を自白をしてしまうことを改めて証明した。この事件によって、私たち弁護士会が求めている取り調べの全課程を録画などで可視化することの重要性と必要性が一層明らかになった。そこで当会は、捜査機関に対して直ちに取調過程を全面的に可視化することをあらためて求めるとともに、今後とも、無理な取調べを防止し、虚偽の自白により誤判が生じることを回避するとともに、後日の任意性と信用性の審査が正しく行えるよう、取調の全面的可視化を求めていく所存である。