弁護団笹森学団長他みなさんのお話(支援者向け説明会でのお話しの要約)     

 

はじめに

 今日、無事、裁判所に再審請求を提出して参りました。今日の記者会見で記者のみなさんが熱心に話を聞いてくださったので、きっとたくさんの報道をしてくださると思いますけれども、報道だけではなく、地元のあしもととか、一般の人たちに色々と菅家さんの問題を訴えていく際に、みなさんのご協力がぜひとも必要だと思います。

 今までは日弁連で審査中ということで、いろいろなルールがあったもんですから、みなさんと若干の距離を置かせていただいて、失礼もあったかと思いますが、これで現実的に菅家さんの事件は、再審事件として宇都宮地方裁判所にかかりました。

 これからみなさんが何か企画をされて集会を催してくださる時には、我々できるだけ時間等の都合をつけて、みんなの中から代表を送って、発言させていただきたいと思いますので、その機会を作ってくださるよう、よろしくお願いします。

新証拠

 再審請求するにあたっては、再審するに値する理由となる「新証拠」が必要な決まりとなっています。

 今回裁判所に提出した主な新証拠は二点。

 新証拠の一点目は最高裁へ提出した、菅家さんのDNA型と真犯人のDNA型とが一致していない可能性を示した日大法医学教室押田茂実教授の鑑定書。最高裁は結局この証拠を事実認定に使いませんでした。事実認定に使われなかった証拠は、再審請求の時に新証拠として使うことができます。

 新証拠の二点目は、鈴木庸夫山形大学名誉教授作成の、被害者Mちゃんの死体所見と菅家さんの自白とが矛盾することを示す鑑定書(注・一九九〇年五月十二日の事件当夜に司法解剖を行なった獨協大学上山滋太郎教授の鑑定書と、二審東京高裁で上山教授が行なった証言とを厳密に分析検討して作成された)。

 我々弁護団はこの事件はDNA鑑定だけですべてが決まるというふうに主張しているわけではなくて、DNA鑑定がもし残っている資料が少なくてできなかったとしても、この鈴木鑑定書に書かれている内容は非常に内容の濃い充実したもので、これだけでも十分再審の扉は開けると思っております。

 この鑑定書によると、殺害方法が菅家さんの自白とはぜんぜん違います。 鑑定書によると、Mちゃんはうつ伏せにされ、後から首を片手で絞められ、その時時顔を水につけられ、肺に水を吸いこみ殺されました。必死の抵抗の跡が足や体の前側の傷となって残っています。  Mちゃんを前から両手で首絞めしたという菅家さんの自白は、虚偽の(注・取調べの刑事の前でやむなく行なった)自白であることがはっきりしました。

DNA鑑定の再鑑定について

 

 

今日は再審請求の申立てと同時に、被害者の半袖下着(注・事件の翌日、渡良瀬川の水中から泥だらけの状態で発見され、ごくわずかの精液斑が付着しているとして血液型鑑定され、一年三ヶ月後に科警研でDNA鑑定され、その後約十一年間、今に至るまで常温で放置されているもの)の証拠保全を申請してきました。

 裁判所に再審開始決定を決断させるためにも、今後、DNA鑑定の再鑑定を申入れるつもりです。今現在、半袖下着の保存状態は劣悪だけれども、古い「みいら」をDNA鑑定するといったように、DNA鑑定は日々進歩しており、古くなったDNAを鑑定する技術はどんどん開発されつつあります。足利事件で行なわれたMCT118法では不可能かもしれませんが、他の方法でやれるはずです。心配なのは、DNAの古さの問題よりも量の少なさです。

 この事件はDNA鑑定が決め手になった事件ですし、現在北海道の晴山事件だとか静岡の袴田事件では再審請求後、裁判所がDNA鑑定を採用しており、この事件でもぜひ採用して欲しい、という期待をこめています。  

 半袖下着についていたDNA型と菅家さんのDNA型が、新しい今の進歩した科学技術で判断して「違う」と出れば、犯人でないことは明らかで、間違いなく再審公判が開かれて改めて再審無罪になるでしょう。

 

  

 
 日本ではまだ、DNA鑑定は有罪の決め手としてしか使われておらず、DNA鑑定によって無罪になった人はいません。だから、もしDNA鑑定によって菅家さんが無罪になったら、日本における先例の第一号となるでしょう。アメリカなどでは、何人もの人がDNA鑑定によって無罪が証明され、死刑台から生還した人もいます。

 しかし、先にも言いましたように、この事件は決してDNA鑑定だけがすべてではない。たとえDNA鑑定が不可能だったとしても、今回の新証拠である鈴木鑑定は、それだけでも十分に再審開始させられるだけの重みのあるものだということを理解し学習し、広めていってください。 

今後の裁判の流れ 

 再審の進め方には法律上特に決まりはなく、裁判所によって裁判官によってやり方はさまざまです。まあ一般的には裁判所と検察官と弁護団との三者協議の形で進められます。非公開で、裁判所の一室で、三者だけでひそやかに進んでいきます。こうした進行状況を公にするためにも、常に報道の、そして支援者の監視の目が必要です。

 まず最初、検察官の「意見書」が出て、それに反論して行く形で進められ、またこちら側はいろいろ請求や申立てを行ないます。その後裁判所が「再審するに足る理由がある」と判断すると、再審開始の決定を出します。その後に再審公判が開かれます。

(注 裁判所が「再審する理由なし」と判断すると棄却を決定。その時にはこちら側は東京高裁に即時抗告を行い、だめなら最高裁に特別抗告を行ない、それもだめなら第二次再審…と続く。) 

裁判所に対する取組み

 裁判所は現在、たくさんの事件を抱えており、一般的に「一旦結論が出てしまっている事件」に対する反応は鈍く、なかなか腰を挙げずに棚上げされる恐れがないわけではありません。それをなんとかそういうことのないように強く要求していきたいと思います。

 

 
 そんな時に、菅家さんには支援者があり支援団体がみんなで活動しているんだということが裁判所に伝わることが、非常に力になっていきますので、つねに宇都宮地方裁判所には「今この菅家さんの再審事件がかかっていて、それはみんな注目してますよ」「かかってるのを知ってるよ、どうなってるのかな?」という監視の目があるということを意識させるような運動が必要ですし、そうしていただけると、我々も非常に心強いです。

 ことに宇都宮の裁判所の周辺を中心に、街中へのビラまきは大切だと思います。そのほか、署名活動等オーソドックスな活動方法がいくつかあると思いますが、自由な発想でどんどんやってほしいと思います。

 

たった一人のビラまきー徳島ラジオ商事件

 昔徳島ラジオ商事件という冤罪事件があり、その犯人とされてしまった富士茂子さんという方、その方は徳島駅前でたった一人でずーっと、ビラを配っていたんです。それがうわさになり、「なんかおばあさんがビラを配っていたね、いったいなんだろね」と言っていたのが、そのうち「あの人、再審請求をやってる人なんだ!」と徐々に知れ渡り、支援者が増えていったそうです。

 
 ですから、たくさんの人でいろんな場所でビラまきをやるのも大切だけれど、少人数でも「あそこでいつもビラを配っている人たちっていったい誰なんだろう」というのが徐々に人々に浸透して行く、そういったことが大事じゃないかと思います。

       (以上。まとめは事務局)