決  定  要  旨

 

(主文)

本件再審請求を棄却する。

 

(理由の要旨)

1 証拠の新規性

  弁護人提出の証拠のうち、文献等の一部については新規性を認めることができ

  ないが、その余の提出証拠については新規性を肯定することができる。

2 証拠の明白性

 (1) 本件DNA型鑑定に関する新証拠

    検査対象資料の来歴に関する裏付けのない押田報告書にあっては、その証拠

価値は極めて乏しい。

    高山報告書が分析の対象とした各赤色点の中心位置は、各バンドの最高濃度

点の厳密に正確な位置とは到底いえないものであって、これらの位置の座標数

値を前提に数値計算をしている高山報告書の証明力は乏しい。

   押田報告書及び高山報告書の証明力はいずれも乏しく、本件DNA型鑑定書

の証拠力を何ら滅殺させるものではない。

 (2) 請求人の自白に関する新証拠

  ア 鈴木鑑定

    泡沫液の量、形状、色調からは、泡沫液が肺水腫または溺水のいずれに由来

するものであるのか明確に区別することは結局のところ困難というべきで、

本件で被害者に多量かつ微細な白色泡沫液が見られたとし、これを直ちに溺

水に由来するものであるとする鈴木鑑定の推論は、法医学上十分な合理的根

拠を伴うものということはできない。

 被害者の肺にパルタウフ氏斑が認められるかについての鈴木及び村井の各

供述は、パルタウフ氏斑と見ることができるという程度のものにすぎない。

被害者に多量の白色細小泡沫液が観察されたことや被害者の肺重量等をもっ

て、被害者が溺水を吸引したと推論することは十分な根拠を伴うものとはいえ

ない。したがって、溺水の関与になじむ片手による扼頸であるとする鈴木鑑定

は、十分な合理性を有するものとはいえない。

 また、鈴木鑑定における死亡推定時刻は、被害者の胃内容物の状態と明ら

かに矛盾するものであって、到底採用することができない。

 鈴木鑑定の結論はいずれも採用することができず、死因等に関する確定判

決の認定に合理的な疑いを抱かせるものではない。

 イ 村井鑑定

村井鑑定が溺水関与の根拠として挙げたパルタウフ氏斑及び肺の過膨張の

所見については、これを認めることができず、泡沫液の存在だけでは溺水関

与を認める根拠となし得ないから、溺水関与を肯定する村井鑑定の結論を採

用することはできない。

請求人の自白内容と死体所見が合致しないとする村井鑑定の結論もにわか

に採用することができず、確定判決の認定に合理的な疑いを抱かせるものと

はいえない。

(3) 結論

弁護人提出の各新証拠(前記で検討した以外の弁護人提出証拠を含む。)は、

それぞれの立証命題と関連する旧証拠の証明力を滅殺させるものではないから、

いずれも明白性を欠くといわざるを得ない。

                                         以 上