27 09月21日

英国を応援しているわけではない

 前期の中間考査も終わり、諸君としては「ちっとんべー(最近覚えた言葉、意味
わかりますか)」のんびりと過ごしている面があるのではないでしょうか。ところが
私はというと、なんだかんだでとても忙しくなっているのでした。というわけで、また
またキャノワードさんの御登場となってしまいました。
 なにが忙しいかというと、そりゃあんた通知表に決まってます。諸君の明るい未
来のために、教師斎藤は地道にコツコツとお仕事をしているのです。今夜はオリン
ピックサッカーブラジル戦があるというのに、それも観ないでいるのです。いや、今
帰ったら観られるかもしれませんが、今日は帰らずに仕事を選びます。諸君にかっ
こいい人間の話をしてあげようと思います。
 『十五少年漂流記』という本を知っていますか。ジュール・ベルヌというSF作家が
書いた、かなり有名な作品なので知っている人もいるはずです。ちなみに私は、中
学校一年の国語の授業の時に、文庫本一冊買わされて、むりやり読まされた記憶
がある本です。しかし、読まされたのはむりやりでも、その内容からは学ぶべきもの
がたくさんありました。
 無人島に漂流した十五人の少年達が、それぞれの個性を発揮し、お互いに協力し
て、一つの社会を作っていくという物語です。壮大なようで、実は諸君にとても身近
なことだったりします。
 ここに登場する少年達は、漂流する前から「紳士」としての資質が備わっていたよ
うです。どんな状況下においても、礼儀正しく、服装はきちんとしていたからです。
よく「英国紳士」という言葉を耳にすると思います。英国は、幼い頃からしつけにつ
いては厳しい国なのだそうです。そんなことから、英国人は紳士的なんていう、この
言葉が生まれてきたのでしょう。なんだかとてもカッコよく思いませんか。
 当時の英国は(今でもその名残はあるらしいのだが)学校や、家庭などで、しつけ
の時に「ムチ」を使っていたそうです。何か悪いことをした時の罰というものは、その
ムチで徹底的に打たれるのです。痛いから、英国の子供達は怒られるようなことをし
た時でも、決して嘘だけはつかなかったといいます。なにしろ悪いことをしたうえに、
嘘をついたということがわかったら、さらにその何倍ものムチによる、しうちを受けなけ
ればならないのだから、当然といえば当然ですよね。
 今の教育現場では考えられえないことなのですが、当時は英国の学校でも、それ
がまかり通っていたのです。そして、そんな中から「英国紳士」というものの形が出来
上がっていき「いいわけをしたり、ごまかして逃げようとする心は恥かしいことだ」とい
う考えが定着していったのです。いわゆる紳士的な行動というのはそういうことを指し
ますよね。わかりやすく言い換えると、素直で正直なんてことでしょう。
 上級生は下級生をいたわり、下級生は上級生の手伝いをすることを自負し、上級生
は曲がったことをしないという誇りを持ち、下級生の尊敬を受けることを自信にしていま
した。こんな背景の中での「十五少年漂流記」ですから、彼らは子供ながらにして、す
でに「英国紳士」なのです。大事なのは何か、先に書いた「いいわけをしたり、ごまか
して逃げようとする心は恥かしいことだ」ということなのです。
 このことをそのまま諸君の生活に置き換えてみてください。何か失敗をして、しから
れるのが嫌だからといって、ごまかそうとしたことはありませんか。知っていることでも
「しらねえ」「かんけえねえ」で済まそうとしたことはありませんか?これらのことは、実
はとてつもなく「恥ずかしいこと」だったということをわかってもらいたいのです。
 集団で生活していると「悪いとわかっていることでも、見つからなければやったほうが
得だ、みんながやっているのだから、自分がやらないのは、損だし馬鹿みたいだ」なん
て考えてしまうことがたまにあります。そのことがいかに格好悪くて情けないことか、自
覚できますよね。
 高校生として、諸君はちょうど折り返し地点にいます。まずはしっかりとこの学年を締
めくくっていかなければなりません。考え方から行動まで、格好よく成長していきたいと
思いませんか。「オレは日本人だから、そんなイギリスのことなんかかんけえねー」なん
て思わず、誰から見ても、「ステキな大人」になっていこうじゃありませんか。私はまだま
だ未完成ですけどね。

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