29 10月06日

強い人間になっていく

 そのうち国語の時間で「物語」という単元をやると思います。けれども諸君は、
わざわざ物語なんて学習しなくても、昔から呼んだり聞いたりしていますよね。
西洋のとても有名な物語のひとつに「イソップ物語」という物語があるのを知っ
ていますか。その中でもあまり知られていない話に、こんな一節があります。
 『キツネはぶどうの房を取ろうとして、何度も懸命に試みましたが、どうしても
ぶどうに手が届きませんでした。それで「あのぶどうは酸っぱいに決まっている」
と言って帰っていきました・・・』
 このキツネは自分でやろうとしてできなかったことを「自分の能力が不足して
いるからできなかった」と認めたくなかったのです。できなかったことを相手のせ
いにし「あのぶどうは酸っぱいんだ、食べる気がしないんだ、そんな値打ちはな
いんだ」と言って自分を慰め、納得させようとしたのです。
 さて、こういった経験、諸君にはありませんか?別な言葉で言い換えると「負
け惜しみ」です。ちなみに心理学では、こういった行為を「合理化」と言います。
 諸君は一年半程前に、高校入試というものを経験してきています。第一志望
校に受からなくて「あんな学校は初めから受かるつもりなんてなかったんだ」「あ
んな試験受かる方がおかしいよ、まぐれじゃないのか」「高校なんてどこへ行っ
たって同じだ、やろうと思えばどこだって勉強はできるんだ」なんて言っていた者
はいませんか。
 入試だけに限られたことではありません。高校に入学して定期試験を返された
り、通知表を受け取ったりするたびに「いい成績を取れるはずがない、取れるほう
がおかしい」「学校の成績がなんだっていうんだ、社会へ出てしまえば関係ないじ
ゃないか」なんて言っている者はいませんか。
 それどころか、毎日のように「あーじゃねーの」「こーじゃねーの」などと言って「負
け惜しみ」を言っている者はいませんか。
 こういったときの気持ちは、ウラを返せば「イソップ物語」のキツネと同じことにな
ります。そう考えると、現代の社会に、この「イソップ物語」がいかに広まっている
か、ということがわかってきますね。
 このことは諸君にとって、決して他人事ではないような気がします。何故かと言
うと、私の中にもこういったことは非常にたくさんあったからです。諸君の倍程の
人生の中で、何度も経験してきました。ところが、「負け惜しみ」を自分に言い聞
かせ、納得させたつもりでも、いつも心のどこかには「本当はちがうんだ、オレに
それだけの力がなかったんだ」なんていう気持ちが残っていました。口では格好
いいことを言いながら、実は悔しさというものは消えていなかったのです。そのう
ちにこの行為は、非常によくない行為だということに気がつきました。
 そんな時は「本当はこうなんだ、けれども、それを人に知られたくないから負け
惜しみでこんな強がりを言ったんだ」と、はっきり自分に言い聞かせるだけの勇
気を持ってみてください。原因が自分にあることに気がついていながら、自分以
外にも原因があるのではないかということを考えてはいけないのです。肝心なの
は現実をしっかりと見つめ、自分のこととして受け止め「あ〜俺には力がなかった
んだ。こんな思いはもうしたくないから、これから努力して鍛えていくぞー」ぐらい
の考えを持ちながら、何事も取り組んでいくのです。立ち向かっていくのです。
 人間なんて弱いものだから、周りに流されようと思えば、
とことん流されてしまいます。「別にどうでもいいや、なるよ
うになれ」なんていうのは、その時その時は楽かもしれま
せんが、100パーセント悪い結果が待っています。つまり
自分にふりかかった現実は、現実としてしっかりと受け止
めて、更なる自分自信のステップアップのためのきっかけ
としなければならないということなのです。
 ちょっと難しかったですか?自分に正直に何事にも立ち
向かって行きましょうということです。
 世の中なんて、立ち向かうか逃げるかの2つしかないの
です。
逃げて負け犬になるのなら、人間のままで生きたいですよね。

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