139 12月11日

再びおばかネタ。 

 私が高校生になるかならないかの頃、男性歌手のフリオ・イグレシアスというヒトが世界的に大活躍中でした。確か彼には 「哀愁のナタリー」 という大ヒット曲がありました。おばちゃま達を中心とした日本国内での人気ぶりはそりゃーすごいモノでした。自分の顔の左側からのカットがお気に入りの彼は、雑誌でもアルバムジャケットでも、必ずといってよいほど左側からのカットの写真を載せていたような記憶が残っています。それでその 「哀愁のナタリー」 という曲なのですが、「〜ん〜ぅなぁたりぃ〜〜ぃい・・・」 というフレーズが印象的な曲で、とっても耳に残ります。それでいてなんともいえない哀愁が漂っているのです・・・・・・って、曲名そのままじゃないか!
 幼稚園来のおばか仲間数人と、喫茶店に行き始めたのもその頃でしょうか。なんだかちょっと大人になった気分でオーダーなんかしてみたりして・・・・・・。俺達ってカッコイイんじゃないか?なんてことも思っていましたっけ。そこでナニを頼むか・・・・・・。タバコも吸わない(あたりめーだっつーの)、女の話もしない(彼女いないんだっつーの)私達の喫茶店での楽しみは、何かを食べることしかありません。しかしそんなに小遣いを持っているわけではない我々は、飲み物とケーキがセットになったケーキセットなるモノを頼むのが精一杯です。ですからソレを頼むのでした。
 ムサクルシイ男数人が喫茶店の小さなテーブルによりそって、紅茶をすすりながらケーキをつっつく・・・・・・。ああ、なんて素敵な眺めなのでしょう。ふと、おばか仲間の誰かがぼそっとつぶやきました。 「なたりぃ〜・・・」 おそらくそいつのアタマの中では朝からずーっと 「哀愁のナタリー」 が、ぐるんぐるんと回っていたのでしょう。私のアタマの中もそうでしたから・・・・・・ヒット曲ってそんなものですよね。つい最近は 「おさかな天国」 でしたが。
 一気に緊張感のほぐれてしまった我々は、口からケーキのかけらを 「ごふぁーっ!」 っと噴射しながら大爆笑してしまいました。そして、ぼそぼそっと 「なたりぃ〜・・・」 を繰り返し始めました。あっちで 「なたりぃ〜・・・」 こっちで 「なたりぃ〜・・・」 トイレに立って 「なたりぃ〜・・・」 ぼそぼそっと歌っていたモノが、いつしか店員が気付くほどの大声になっていきました。もう気分はフリオです。顔も左側を前面に押し出すように、ちょっと斜めに構えています。
 この日をきっかけに 『ナタリー会』 が結成されました。「おい、今日どーする?」 「ん、ナタリー会しようよ」 「やっぱりそうだよな」 「なになに?ナタリー会って?」 「え、来ればわかるよ」・・・・・・ 
 わざと男同士では入りにくいような喫茶店を選びます。難しい顔をして、レモンティーとケーキのセットを注文します。ケーキをひとくちほおばるたびに 「〜ん〜ぅなぁたりぃ〜〜ぃい・・・」 です。持参したボールペンで紙ナプキンに 「ナタリー会参上」 「○○ケーキはとってもナタリーだった」 「なたりぃ〜・・・」 「騒いですみません」・・・・・・等など、皆思い思いのメッセージを残します。テーブルの上に置いてあるメニューやオシボリを使って、片付けにきた店員さんが 「うふっ」 と笑ってしまうようなデコレーションをして、その店を後にします。その活動が何軒の喫茶店に及んだか、もう覚えていません。
 ・・・・・・ってただの迷惑な客じゃーないか。
 よい子のみんなは決して真似しないでください。 


あわてなくてもだいじょうぶ。そのうち死ぬから

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