064 07月09日

がむしゃらだ。 

 以前読んでいた雑誌に、とてもやる気になる力強い文章が掲載されていたので諸君に紹介します。予備校講師、吉野敬介さんの体験談です。(雑誌 『PHP』 PHP研究所発行 より転載)ちょっと長いので今日と明日、2回に分けて紹介させてもらいます。
期末試験前の諸君にかなり有効なオハナシだと思います。

 「許(もと)暴走族の予備校教師」 なんていう肩書きで、オレも少しは名が知られるようになったみたいだ。しかし、不良が改心して立派に更生(こうせい)した、などとは思わないで欲しい。オレ自身は、今でも目一杯 「つっぱって」 生きているつもりだし、ご立派な人間に生まれ変わったわけでもないからだ。いや、ある意味では不良していた頃よりも頑固(がんこ)につっぱっているかもしれない。こんなオレの今までの経緯(けいい)を少しお話しよう。
 二十歳の頃、オレの人生に一大転換(てんかん)期が訪れた。最愛の彼女が、オレの許を去ったのである。「やっぱり、大学くらい行ってくれないと・・・」 という言葉を残して・・・ショックだった。中学、高校のあいだケンカに明け暮れ、暴走族では特攻隊長までいたオレは、勉強などほとんどしたことがない。それでも一生懸命働けば、彼女と幸せにやっていけると信じていた。その彼女が、先の台詞(せりふ)を残して大学生の新しい彼へと走って行ったとき、オレの心はボロ切れのようにズタズタに引き裂かれてしまったのである。
 つっぱって生きて来たオレも、一時は自殺を考えたほど落ち込んだが、そのうちだんだんと持ち前の反発精神が湧き起こって来た。「なめんなよ、このやろう!大学ぐらい行ってやろうじゃねえか!」 と。本当に彼女のことが好きだった分、憎らしい思いも強く、なんとしても大学に受かってやる、と固く固く決意した。それが9月、受験まであと4ヶ月しかないときだった。
 さて決意まではよかったのだが、なにしろ当時のオレは小学生ほどの学力さえおぼつかないような状態である。働きながら塾に行き始めたが、授業はまるで理解不能で、講師の放つ言葉は、宇宙人の話を聞いているようなものだった。「どうすればいい?このままじゃラチがあかない」 どう考えても大学に合格など不可能なことに思えて絶望的になったが、とにかく「やるしかない」と改めて覚悟し直した。これはオレの意地とプライドがかかった大勝負だったのだから。
 仕事をやめ、1日20時間、ひどい時は3日も寝ずに勉強しまくった。眠気を覚ます為に、手に針をさしたりもした。なにせ一から十までわからないのだから、わかるようになるまで、基礎から徹底的にやり続けるしか方法がないのである。辞書もちゃんとひけない英語はあきらめ、国語と日本史で満点を目指すしか、合格の可能性はない。そう判断したオレは死に物狂いで勉強し、そして國學院大學に合格することができたのだ。思えば、この時の拷問(ごうもん)のように苦しかった受験勉強が、このあとのオレの生き方を明確にしていくきっかけになったようである。
 
 明日につづくぞ。 


起こっている事実にもっと目を向けなさい。他人があなたをどう見ているかではなくて

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