117 11月11日

11月11日。 

 今年も貴方に手紙を書きます。
 今年は3年生の担任をしています。毎日、あーじゃねーの、こーじゃねーのと元気に過ごしているヤツらです。最近はその彼らを、「進路決定まであと少し、卒業まであと少し、登校する日数もあと少し、ちゃんと卒業してくれよな、悲しい思いさせないでくれよな」 と、いう思いで見つめています。貴方がいなくなってしまったのは2年前の今日、彼らが1年生で貴方が3年生の時でしたから。
 今年は文化祭がありました。自由な企画がてんこ盛りで、生徒達はかなり大騒ぎしていました。学年で一番元気だった貴方がいたら、かなり楽しめたのではないか、と思いました。そういえば貴方が1年生の時も文化祭がありましたよね。学年の、「ミス&ミスター一高を探せ」 という企画に参加してくれた貴方は、見事に準ミスに選ばれました。「準」 てところが貴方らしく、商品として辞書とCD券をもらったのに、「辞書なんていらない」 と、CD券の存在に気づかずに、そのままどかへ無くしてしまったのも貴方らしかったです。
 去年の手紙に書いた、駅で一緒になる貴方に元気づけられていた後輩は、もう3年生になりました。「今度は私が先輩みたいに、誰かに元気をつけてあげるんだ」 と、元気に過ごしています。
 実は今年教えている生徒の中に、貴方の弟の親友がいます。彼も貴方のように学年一元気なヤツです。貴方に関する話を始めとし、こんな私相手にいろいろな話をしてくれます。これもきっと、貴方が引き寄せてくれた縁なのでしょうね。ありがとうございます。
 1年生の時は担任として1年、2年生の時は授業を受け持って1年、3年生の時は隣のクラスの担任として約1年、合計すると約3年という間、貴方と接してきた私が感じていったのは、ずいぶんと成長したなぁ、ということでした。本当は人一倍弱いくせに、人の前では人一倍強気な自分を作る貴方のことです。他人にはわからないよう、貴方なりに努力をしていたのだと思いました。少しだけ素敵でした。少しだけしかほめられないのも貴方らしいでしょ。今だから言えることですが。
 そんな貴方は18歳になる直前に、この世からいなくなってしまいました。「私は永遠の17歳よ」 なんておどけているかもしれませんが、私が年々歳を取っていくように、貴方にもきちんと歳をとっていってもらわないと困ります。覚えていますか、貴方が私のクラスにいた時、こんな会話がありました。
 「たー、飲みに連れてってよ」 「うん、卒業してイイオンナになったら、いくらでも飲ませてあげますよ」 「今は駄目なんかい」 「どー見てもイイオンナじゃありませんから」 「イイオンナじゃん」 「ぜんぜんイイオンナではありませんって」 「ちっ!たーが、付き合ってくださいっ、てお願いしたくなるようなイイオンナになってやるからな。お願いされたって付き合ってやんないけど」 「おう、期待してますよ」 「見てろよ!」
 貴方のことですから、歳をとっていれば、少しはイイオンナに近づいているに決まっています。今月は貴方の誕生日もあります。おめでとう、ようやく20歳ですね。
 そんなイイオンナになった裕子さんに会いに行きます。
 酒持ってくぞ!待ってろよ。
                                                      たー 


人から愛されるのを待っているのではなくて、まず自分が相手を愛すること 

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