124 11月20日

挫折。 

 大学生の時、あっちこっちのライブハウスに出演していたJAZZ研のOBから、クリスマスに仕事をもらったことがあります。
 「あ、もしもし。タクくん?A川だけど」 「あ、お久しぶりです」 「あのさ、クリスマス2日間、A葉台のクラブで演奏してくれないかな」 「予定は空いてますが・・・」 「スタンダードなものばかりだから、楽勝だよ」 「ジャズですよね」 「基本的にはね」 「んで、いくらくらい」 「一晩CG(ツェーゲェーと発音=1万5千円のこと)くらいくれるらしいよ」 「す、すっごいですね。や、やらせていただきます」 「んじゃ、連絡先教えるから直接ハナシをつけてくれる」 「わ、わかりました・・・・・・」
 2日間で3万円のギャラです。当時の私としては破格でした。しかも店は家から車で15分ほどの場所にあります。まとわりつく不安もどこへやら、引き受けることにしました。
 何が不安かって、JAZZ研の私は、JAZZといわれる音楽はほとんど演奏していないし、聴くこともしていなかったのです。ついでに楽譜だって読めません。ですからスタンダードなものばかりだから、といわれてもそれがわからない、たとえ譜面をもらったとしても初見(しょけん=その場で見て演奏)ができないのです。
 そんなコトでよく音楽で仕事をしていたなぁ、と思われるかもしれませんが、この業界には結構いい加減な部分もありますから、私でもなんとかなっていたのです。ところが今回は、私のキャパシティを超えてしまっている仕事を引き受けてしまったのです。
 バンドのリーダーから、演奏するかもしれない曲のテープと楽譜を受け取りました。「演奏するかしないかは気分次第、テンポやアレンジだってその時の気分次第だから・・・」 という言葉だけがやけに頭に残りました。それからクリスマスまでの数日間は、かなりマジメに練習しました。覚えなければならないこと、知らなければならないことがあまりにもたくさんあったのです。バンドとして練習なんてモノもなく、ぶっつけ本番(こういうことはごく普通のこと)で当日を迎えました。
 チューニングやらナニやらとセッティングを終了した後、我々の演奏が始まりました。案の定曲順や曲調はリーダーの気分次第、全くと言っていいほどついて行けない私がいました。アタマの中はマッシロで、オロオロしている自分が、はっきりと存在していました。
 なんとかワンステージが終わりました。私はほとんど演奏できませんでした。演奏中も演奏後も、メンバー達の私に接する態度はあからさまでした。「なんだよ、オメェーは口先ばかりで、ちゃんと演奏できないじゃんか」 と、いう気持ちがそのまま伝わってきました。悔しかったです。心の底から悔しいと思いました。
 当然のごとくギャラは半額以下でした。音楽をやってきて、初めてミジメな思いをしました。今こうして思い出して書いていても、悔しさが湧き出てきます。こんなミジメな思いはもう二度としたくないと思いました。オモテムキだけでは通用しない、ナカミをしっかりしていこう、と思いました。
 就職や進学に関して、これから試験を受けるヒトがいると思います。オモテムキだけではなく、是非ナカミもしっかりとしていってください。ミジメな思いをしないように。
 な。
 マジ悔しかったんだ。半ベソ状態。
 くそー。


がんばれ

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