128 11月27日

はねられた。 

 気がつくと 「私立中学校お受験組」 になっていた私の小学校6年生の時の生活は、今では考えられないものでした。月水金は塾、火木は家庭教師、土は習字、日は模擬テスト・・・・・・。駅から家まで徒歩10分なので歩いて帰ればよいのに、夜遅いからと駅前まで母が迎えにくる過保護ぶりでした。本当にイケスカナイ子供です。
 塾がある駅の売店でお菓子を買って、ポリポリ食いながら電車を待つ・・・。そんなナニ気ない行為にはまっていました。ほっと息抜きのできる時間だたかもしれません。その日も、いつものようにポリポリと電車を待ち、電車に揺られて15分後、親の待つ駅に到着しました。
 待つことよりも、待たすことの方が嫌いな私は、母を待たせたくなかったので、全速力で階段を駆け上がり、改札口を通過しました。そしていつも母が路上駐車をしている道路を目指しました。交通量はそれなりの、駅前道路の反対車線には、母の車はありませんでした。よかった、まだ来ていないんだ、と思いながらポリポリしていました。
 反対側に渡って待とうかな、と思ったその時、反対車線に、ススーっと母の車が停まりました。「あ、来た!もうここにいるよ!」 と合図をするように片手を上げた私は、手前車線の車の流れが、その先にある赤信号の影響で停まり始めた合間をぬって渡っちゃえ、と、横断歩道を走りました。
 停まっている車のすき間から、反対車線に飛び出た時です。私の視界の左手から、四角いライトが二つ飛び込んできました。「あ、俺はクルマにひかれちゃうのか!」 と思ったその瞬間、「ドーン!」 という衝撃と、「キャー」 という母の叫び声を浴びました。ライトの次に視界に入ってきたのは、桜吹雪のように宙を舞う、さっき買ったお菓子の中身でした。
 ・・・・・・・・・・・・ 「あ、やっぱりはねられちゃったみたいだ。ん、目の前が真っ暗だ。あ、うつ伏せに倒れているんだ。つつーっ、痛ぇー。足や腕が痛いなぁ。折れていたら嫌だなぁ。よいしょ・・・。お、動く動く。折れてないみたい。お菓子もったいなかったなぁ。全部食べておけばよかった。救急車とかも来ちゃうから、起きるとヤジウマがたくさんいるんだろうな。鼻血とか出ていたら恥ずかしいぞ。よし指突っ込んでみよう・・・・・(ぐにっ)・・・・・・。うん、これは出ていない感触だ。よかったよかった・・・・・・」
 「大丈夫ですかー!」 と運転手が降りてきました。くだらないことを考えていた割に、抱きかかえられた瞬間、恐くなってわんわんと泣く私がいました。
 私と運転手の不注意が重なり、横断歩道ではねられました。幼かった私の不注意は、手前側の車が停まっていて反対車線が見えないことを理由に、左から来る車の確認をせずに飛び出たことです。横断歩道だし大丈夫だろう、とも思いました。運転手の不注意は、横断歩道上で停まっている対向する車の列から、横断者が飛び出てくるだろう、と予測しなかったことです。
 私の左腿には、今でも車のバンパー部分にあたった時に出来たシコリが残っています。触る度に思いだすんだなぁ。
 諸君もこれから注意すべし。
 てか、今日は事情により諸君の前にはいません。ちゃんとやってね。 


そんなにがんばらなくても、いいんじゃない

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