003 04月12日

しくだい。 

 家族の皆様、さきだつ僕をお許しください。僕はお父さんにおこられて家にこなくなったA・B・C・D・Eに、学校でいじめられていました。みんなたった一日で態度がかわり、皆、僕を無視しはじめました。そうじの時間はトイレで服をぬがされたり、水をかけられたりしました。いたずら電話もよくありました。僕がでると受話器をとったとたんきれてしまいました。またお金のふんしつはしょっちゅうありました。五百円玉を2枚持っていくと、帰りには1枚になっています。このようなことがつづき、今では五千円近くうばいとられました。まだまだありますが僕はもうがまんできなくなりました。
 学校へ行っても友達はいますが、その友達に僕を無視させたりしていそうで、とてもこわいのです。生きているのがこわいのです。あいつらは僕の人生そのものを奪っていきました。僕は生きていくのがいやになったので死なせてください。
 それからお父さん、自転車を買ってくれて本当にありがとうございました。まだ1週間ものっていないけど、本当に感謝しています。自転車はFちゃんにでもやってください。あいつらはGやいろんな人をいじめていました。まだその、いやそれがどれほど悪いことなのか分かっていないようなので僕がぎせいになります。僕のまだきれるコートや服はH・I・Jなどにあげてください。僕のものなんかとっていてもしかたないのでそうしてください。バスケットボードはK君にあげてください。家族のみなさん、長い間どうもありがとうございました。
 平成○年○月○日 K中一年 IH

 これは数年前、いじめを苦にして自ら命を絶ってしまった中学生1年生、IH君の残した遺書の全文です。日付・学校名・氏名等は伏せてありますが、遺書そのものにはそれらがきちんと記入されていたとのことです。この遺書を残し、家族の寝静まった深夜3時、バスケットボードにひもをかけ、IH君は自らの命を絶ってしまったのです。どんなにつらかったことでしょう。どんなに苦しかったことでしょう。諸君は今高校1年生です。IH君は当時中学1年生でした。今の諸君よりも小さな体、小さな心で日々苦しみ、決断を下してしまったのです。
 私はこの世に生を受けて、ぼちぼち40年が経とうとしているニンゲンです。今までの人生で、毎日いろいろなことがありましたが、何があっても 「生きていて良かったぁ」 と思うことを多く感じることを心掛けてきました(←これが昨日ハナシしたPositive的な考え方だな・・・)。ですから諸君にも、そういった思いをしてもらいたいと思っています。だってさ、なんだかんだと言って、「生きているって楽しいなぁ」 なんて思えることって素敵で幸せだと思いませんか。
 そんな諸君達1年1組30人がこの先1年間、快適な空間を共有していくために、「1年1組3日目の今日、IH君の遺書をもとに、いろいろと考えていけたらなぁ」 と思い、今日は諸君にこの文章を読んでもらいました。
 まだ授業は始まっていませんが、ホームルームの時間に時間がとれなければ、宿題(しゅくだい。↑タイトルは茶目っ気読み)を出させてください。IH君の遺書を読んで率直に思った意見を、配布した原稿用紙に書いてきてもらえますか。できれば明日中の提出をお願いします。急で申しわけないですけれども、諸君が過ごす1普1という空間を、一刻も早く快適にさせていきたいので御勘弁です。
 昨日、九州で中学生4人が亡くなるという悲しい事故がおきました。「命」 の尊さを、諸君にも再認識してもらえればと思います。
 ぢゃな。 


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