015 04月28日

オレオレその2・・・なんだけどさ・・・。 

 実は昨日の水曜日になるまで気が付かなかったことがありました。明日の金曜日は休みなのですね。はぁぁぁ。つまんねーなぁ・・・。水曜日から金曜日までで3回完結でと思ったハナシを昨日振っちゃったので、最後の締めくくりは来週ってことになっちゃいました。ごめんなさい。では、さて続き↓。

 おいおいおいおいおい、ちょっと待てよと誰もが思った。文化祭二日目といえば、全校生徒とその父兄、全職員と、ざっと見積もっても千人位の人数の前で演奏するのだ。そりゃ我々はライブハウスだの、もてるんだのと、言いたい放題のことを言ってきた。しかしそれは口先だけのことで、人の前で演奏するのは初めてのことであり、ドラムの奴だってまだ二回しか本物をたたいたことがない。『こぢんまりとした小さな場所での演奏ならばなんとかごまかしのききそうな実は小心者の完全ど素人バンド』なのである。だからといってせっかくつかんだチャンスを、みすみす無駄にはしたくない。「まあ、なんとかなるだろう」 の合言葉のもと、再び練習が始まったのは、本番三日前だった。
 かくして文化祭当日がやってきた。一日目はクラスの展示発表かなんかを見て 「わあ、面白いなあ」 なんて余裕をかましていたが、今日は違う。朝からそわそわどきどき、何度緊張をほぐしにトイレに行ったかわからない。正直ビビッていた。私だけではなくメンバー皆がだ。そうこうしているうちに出番がまわってきた。「次は三年生有志によるバンド演奏です」 と放送委員のアナウンスが入ると、幕の向こうの客席が少しざわめいた。ボーカルが客席に向かって 「いくぜー」 とはっぱをかけるが、幕の向こうは何も反応しない。メンバー同士 「やべーよ、やめちゃおうよ」 と目で語り合うがすでに遅く、幕は上がっていく。すかさずドラムがカウントを始めて、演奏が始まってしまった。
 幕が上がりきってしまうと何のことはない。我々が最も恐れていた千人の観客たちが、照明の関係でほとんど見えないのだ。緊張がほぐれ、間違えないように演奏することに集中できたものの、無我夢中だった。そのうち手拍子らしきものから、メンバーに対しての掛け声まで聞こえてきた。最後の曲が終わる。とたんにアンコールの拍手に包まれる。レパートリーが五曲しかない我々にそんな余裕はなく、幕が下がる。ステージ脇に行くと、出番待ちの合唱部員の 「こんなに盛り上がって私たちやりにく〜い」 といった視線が待っていた。「あっという間の出来事」 とはこういうことを指すのだと初めて実感した。
 文化祭から一週間、我々はルックスなんて大して良くないくせに、ただバンドをやっているというだけで、もてていたのを鼻にかけていた。廊下を歩けば見知らぬ女子から手紙をもらったり、声をかけられたり、今思うと本当に嫌な奴らだと思う。ちなみにメンバー中一番もてなかったのは、もちろん私。
 そんな中、廊下を歩いていると、向こうから校長先生が歩いてきた。『うわっ、いやなんだよな〜、あの校長。朝礼の話がやたらとなげーんだもん。話したこともないし早くあっちいかねーかな。ん?ん?、なんだよ、こっちくんなよな、注意されるようなことは何もしてないぞ。えっ、なに、握手?握手してくれるの、やだよ、俺は別にしたくないもん。あ〜あ〜、握手しちゃった』 「いやー、キミキミ、私は感動してしまったよ。長い間教師をやっているけれども、生徒たちがあれだけ一つになって盛り上げてくれたというのは初めてだ。ほんっとに素晴らしかった。これからも頑張ってくれよな、本当にありがとう」 ぽかんとしている私を置いて、校長先生はすたすたと行ってしまった。
 「おいおいおいおいおい、びっくりしたよ、今な、校長に呼び止められて握手されちゃったよ」 休み時間のため一ヶ所に集まっていたメンバーに話をすると、「何だ、おまえもか」 との言葉。聞けばメンバー全員が校長に呼び止められ、私と同じ目に遭っていた。なんだかわからない、言葉ではいい表せない喜びのようなものが込み上げてきた。我々の心の中のランキングで、校長は赤丸急上昇になった。

 まだ続くよ。よい週末&連休を。 


動揺した時には、心の緊張を少しだけ解いてみて。冷静さと狼狽の、どちらも選べることがわかるだろう

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