120 11月06日

11月11日。 

 今年も貴方に手紙を書きます。いったいいつまで書き続けるのだろう、と毎年11月になると思います。そして毎年この仕事に関わっている限りは書き続けるのだろうな、という答に行きつく私がいます。昨年から持ち上がって貴方と同じ緑色ジャージ、2年生の担任をしています。
 毎年手紙を書くのは、進路決定と卒業を控えた貴方が、原付きの事故で逝ってしまった11月11日でした。今日はまだ6日、貴方の命日にはまだ日があります。その11日土曜日は学校が休みで、通信を発行できないということもありますが、実は一刻も早く貴方にかなえてもらいたいお願いがあり、今日の手紙にさせてもらいました。
 先週の末のことです。一人の生徒が事故に遭いました。すぐに救急車で運ばれ、総合病院で手当てを受け、今のところは命に別状はないとの診断を受けています。短期の入院で済むか、長期の入院になるか、これを書いている今の時点ではまだはっきりとわかりません。
 先週病院に運ばれたその日、私は御家族の方々と一緒に、しばらく彼女の横に立ち会っていました。事故のショックのため、彼女は多少の興奮状態でしたが、明らかに生きようとしていました。早く怪我を治して一刻も早く家族のもと、そして皆のもとに戻りたい、という気持ちを彼女の言動から痛感しました。
 しかし私は医師ではありませんし、彼女のために直接何かしてあげられることもありません。唯一できることは、一刻も早く回復してくれるように祈ることだけです。折りしも今月は11月、貴方の命日のある月です。強引かもしれませんが、これも何かの示し合わせではないかと感じました。
 去年も書きましたが、貴方の思い出を書き挙げていくとキリが無いほど出てきます。1年生の時は私のクラスの中心的な存在だったこと。スキー教室の宿の部屋で夜中にごんじりを食べて、部屋中をごんじり臭くしたこと。親子喧嘩して泣きながらの三者面談をしてくれたこと。国語の時間のスピーチで、何十分も人を飽きさせない話をしてくれたこと。個人ノートには毎回楽しいイラストと文章を書いてくれたこと。人一倍へこみやすいのに、皆の前ではほとんど強気な自分を見せていたこと。1年生最後の日にクラスをひとつにまとめあげてくれたこと。3年生になってからは、たまたま同じ駅から通学している後輩に声をかけ、その後はその後輩の心の支えや目標とする先輩になるほど、よく面倒を見てあげる存在になったこと・・・・・・。
 そんな生き方をしてきた貴方でした。ですからきっと一刻も早く回復しようとしている彼女の、良き先輩になってくれるような気がするのです。いや、なってくれませんか。そちらの世界のことはわかりませんし、貴方の都合を聞くこともできません。貴方にとって負担が増えるのかもしれませんが、是非ともお願いしたいと思いました。もちろん私も出来る限りのことはしていきます。一人の女の子が、生きようと必死で戦っているのですから。
 毎年お願いばかりですみません。
 宜しくお願いします。
 裕子さん。
 今年も会いにいくぞ。

                                                    たー 


アホか、気い抜くな。気合い入れてがんばれ。ファイトやで

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