076 08月29日

ありえない。 

 水曜日です。週明けに安倍改造内閣が発足しましたよね。その関係で昨日はほとんどの新聞のコラムが、それをテーマにしたものでした。そんな中でのこのコラムです。事件を耳にした諸君もいるのではないでしょうか。こんな事件が実際に起きてしまう世の中になってしまったのです。


 本日のテーマは、内閣改造で決まりのはずだったが、書かずにはいられない。名古屋市の住宅街で、男3人が見ず知らずの31歳の女性を拉致(らち)し、金を奪って殺害、岐阜県の山林に遺体を捨てた事件のことだ。
 女性が自宅を間近にして、ミニバンに引きずりこまれたのは24日の午後10時ごろ。夜遊びしていたわけではない。普段は午後7時半ごろ帰宅しているが、この日はたまたま午後からの仕事で遅くなっていた。幼いころ父親と死別し、母親との2人暮らしだった。
 囲碁が趣味で、読書や料理も好きだった。「母のために家を建てたい」 と将来の夢を語り、結婚話が進んでいた、と報じる新聞もあった。殺される何のいわれもない。それどころか、周囲の人たちが幸せを願わずにはいられない、親孝行に励む知的でまじめな娘さんの姿が目に浮かぶ。
 だから余計に 「金を奪うなら力のない女の方が狙いやすい」 とうそぶいて、その通り実行した男たちに怒りがこみ上げてくる。か弱い女性の両手首に手錠をかけ、顔に粘着テープを巻いて身動きできないようにして、ハンマーでめった打ちにするなんて。
 一人ではなにもできない人間に限って、群れると残酷なことをしでかすものだ。見知らぬ人の善意や知恵を結びつけるインターネットは、同時に悪人の連携を促(うなが)し、犯行をエスカレートさせることもある。恐ろしい世の中になった。
 事件発覚のきっかけは、男の1人が、愛知県警にかけた電話だった。罪の重さに耐えかねたというより、「死刑が怖かった」 かららしい。身勝手きわまる言い分だが、その後も繰り返されたかもしれない凶行を、「死刑」 が抑止(よくし=そうさせないようにおさえること)したともいえる。死刑廃止論者たちはこの言葉をどう聞くだろうか。
(2007年08月28日 産経新聞 「産経抄」)


 ありえませんし、言葉がでません。諸君はどうですか。
 ぢゃな。 


「あなた」という人間に出会って、はじめて「わたし」という人間になる

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