118 11月12日

別れ。

 諸君の学年を持って3年目になります。クラスや教科を持ったヒト達はもちろんのこと、それ以外でも沢山のヒト達と出会うことができました。残り4ヶ月で、そんな諸君との別れが来てしまうのですが、それを待たずに、ひとりの生徒との、二度と会えない別れがきてしまいました。

 貴方と出会ったのは2年半前の4月でした。入学式後の最初のホームルームの時間、出席簿を片手に、ひとりひとりの席をまわって挨拶していた時に初めて言葉を交わしました。小さくてやたらと元気が良い子だな、というのが最初の印象でした。
 日が経つうちに次第にウチのクラスは女子の勢力が強くなってきました。騒がしいのも女子が中心なのでですが、何かある時にしっかりとクラスを引っ張ってくれるのも女子が中心でした。そして、いつもそんな女子の中心にいたのが貴方でした。勉強以外のことが中心でしたが、何事にも積極的な姿勢が買われて、文化祭では準ミスにも選ばれましたよね。
 女子同士で初のいざこざがあった時に、初めて家に電話をさせてもらいました。「大丈夫だよ。何かあったら私にまかせておいてよ!」という力強い言葉で、久しぶりに共学クラスを担任した私は、随分と元気付けられました。
 国語の時間に毎回やっているスピーチが貴方の番になると、ほぼ一時間はしゃべりっぱなしでした。おかげで私は授業をせずに、楽をさせてもらったこともあります。貴方はしゃべることや文章を書くことに才能があるのですが、イラストを描くことにも才能がありました。私のクラスではなくなってしまった2年生の時、修学旅行パンフレットの表紙イラストを、快く引き受けてくれましたよね。そういえば、よく私の顔を黒板に描いていましたっけ。誰が見ても似てました。
 個人ノートの中の貴方は特に魅力的でした。中学の頃に散々はじけたので、高校ではしっかり過ごそうと思うが、それが出来ないんだと悩んだり、彼氏との関係で悩んだり、自分の生きかたについて悩んだり、もう親を泣かせたくないんだと悩んだり・・・といった、普段の貴方とは全く違う姿がありました。もちろん普段そのままの明るく元気な姿も沢山ありました。「将来はさくらももこのようなエッセイを書くんだ」 と豪語していただけあって、その文章には惹かれるものがありました。普段の行動や見かけからは想像できないような、しっかりした面を見せてくれましたよね。
 3年になってから私が廊下で、「おかーちゃん泣かせるなよ!」と声をかけると 「泣かせねーよ!」なんて元気よく答えていました。最後に言葉を交わしたのはいつでしたっけ。
 1年生最後の帰りのホームルームでのことです。連絡事項を伝えた後、いつも通りの 「はい、号令かけてー!」 という私の言葉に対して、クラス全員に 「ありがとうございましたー!」 をやられましたよね。実は涙が出そうに嬉しかった私がいました。その時、 「せーの!」 と大きな掛け声をかけてくれ、清掃用具箱から取り出した、抱えきれないほど大きな花束を私に渡してくれた貴方の姿は、今でも私のまぶたに焼き付いています。そして、一生忘れることが出来ない私の思い出になりました。ありがとうございました。
 貴方が目立ちたがり屋なのは知っています。だけどね、こんな形で目立ってどうする。
 俺より先に死んでしまうやつがあるか。


人生乗りこえてなんぼやっちゅうねん

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