57 06月28日
『星空の学校』
夜間中学、というものの存在を諸君は知っていますか。恥ずかしながら、私は教職に就いているというのに、その名称、そして存在すら知りませんでした。正式名称は「中学校夜間学級」といいます。
戦後間もない頃、家の手伝いをしたり、働きに出されたりして、昼間の中学校に通えなかった子供たちのために開設されたのが始まりでした。
入学の資格の原則としては、東京都の場合は、都内に住んでいるか都内で仕事をしていて、中学校を卒業していなければ誰でも入学できます。年齢、国籍も問わず、入学の時期も決まっていません。ですから開設当時とは違い、現在の夜間中学校には様々な人たちが通っています。
戦争、病気、などの様々な理由で義務教育を終えられなかった人、在日の韓国人や朝鮮人一世の人、中国引き上げ者の人、難民だった人、その他フィリピン、タイ、ベトナム等、様々な国からきた定住外国人(日本人と国際結婚した人たちや、その子供たち。日本で仕事をしている外国籍の人等)の人たちです。
国も言葉も文化も世代も異なる人たちが学んでいるのが、現在の夜間中学校の姿です。都内だけでも8校の夜間中学があります。昼間の中学と同じ校舎を使うところもありますし、独立した校舎を使っているところもあります。今年の4月現在で、都内では約400人以上の生徒たちが学んでいるとのことです。
もちろん昼間の中学と同じ教科を学ぶのですが、先に書いたように様々な事情の人たちが学んでいますから「ひらがな」や「日本語」から学ぶクラスもあります。文化祭や学校行事も普通にあります。午後5時半から9時過ぎまでの時間帯に学ぶ、まさに『星空の学校』です。
私は夜間中学のことを、とあるホームページで知ることができました。また、教師として夜間中学で働く方のホームページも知ることができました。先に書いたように、国も言葉も文化も世代も異なる人たちが学んでいます。そこで学んでいる人たちの作文や、教えている先生の手記を読むと、我々が日常の中で忘れていってしまっているコトを意識させてくれるのです。
実はこの夜間中学、様々な問題を抱えている面もあるのですが、その辺については追々紹介していくとして、まずはそこで学ぶ生徒さんの作文をひとつ紹介させてもらいます。
むんすなむさん(仮名、釜山出身、昭和3年生まれ)の作文 『夜間中学校』
私は字を知らないから、物を買っても説明を読めません。一番困りました。だから字
を覚えないといけないと思いました。
学校に来てよかったとおもいました。来て字をかけるのがうれしいです。自分のとこ
ろをかけるのがうれしくてたまりません。
私は字をおぼえようと思いましたが、なかなか頭にのみこめないです。先生方はい
っしょうけんめいにおしえてくれますのにもうしわけなくて困ります。
私は一番うれしかったことは、何もわからなかったのに、先生方のおかげでこんな
におぼえました。うれしいです。どうもありがとうございました。
どうですか。もう70歳を越えるヒトの書いた文章とは思えない新鮮さがあると思いませんか。夜間中学の存在価値って目茶苦茶あるのではないか、と感じさせてくれる文章です。
つづく、っつーの。
人を尊敬できる人は、人に尊敬される。