Z5005 02月15日

初チョコの思い出。 

 そういや昨日はチョコの日。なんだってこんな日があるのでしょう。それはさておき、昔書いた原稿をアレンジして紹介します。
 「ねぇ、放課後音楽室に来て!」 給食を食べ終わった昼休み、同じ5年7組の女子が半ば強引に少年斎藤に声をかけてきました。「あ、いいよ・・・(もしかしてもしかしてかぁ?うひゃひゃひゃ・・・・・・早く掃除の時間にならないかな・・・もう・・・)」 
 「なーに?」 「あのね、カオルが斎藤君にチョコレートあげたいんだって」 「え”っ(やたっ!もらえるのもらえるの!?) 、あ、そ、そーなんだ・・・」 音楽室のテレビの陰から四角い箱を持ったカオルさんが出てきました。「はい、これあげる」 「あ、ありがとう(うおぉぉぉぉぉ!)」 
 「なに?なんだったんだよー」 「ん、なんでもねーよ・・・かえろかえろ!」 教室で待っていてくれた友達と家路につきました。何食わぬ顔をしていますが、心臓はばっくんばっくんです 『は、はやく帰ってこの包みを開けたい・・・は、早く・・・走っちゃおうかな・・・もう・・・うぅ・・・』 頭の中はぐるんぐるんです。
 団地の階段を4階までかけあがって、がちゃがちゃとカギ開けて、だかだかと部屋に入って、ばさばさと包みを開けると・・・・・・そこにはハート型のかわいらしいチョコレートが入っていました。満面の笑みでむしゃむしゃとチョコレートをホオバル少年斎藤・・・・・・。
 さて、ここからが問題なのでした。
 もらったのはいいのだけれども、これからどうしたらヨイのかが少年斎藤にはわからないのです。小学生にしては大人っぽく、茶色がかったサラサラの長い髪の毛が印象的な、スラリとした長身のカオルさんを、特に意識することなく普通に遊んだり馬鹿なことをしたりして過ごしていた私がいます。やがて6年生になり、卒業・・・。F葉学園という お嬢様中学校に進学してしまったカオルさんとは、自然と会わなくなっていきました。
 ホワイトデーなるものの存在を知ったのは、それから数年後のことです。 「あ、しまった。カオルさんに返事もしてないし、お返しもしていない・・・・・・」 と思った時にはもう遅かったのでした。モノを知らないし、度胸も無かった私は、彼女の精一杯の 「告白」 をサラサラ〜っと流してしまっていたのです。そんな私に対してフツーに接してくれていたカオルさん、今思えばスッゲーいい女なのだな・・・なんて思ってしまいます。
 十数年前に、舞台女優になり役ももらって頑張っている、という話を聞きました。それ以来ぷっつりとカオルさんの近況はわかりません。きちんと返事を出来ていないまま、現在に至っていることを今でも気にしてしまうオヤジ斎藤がいるのです。当時は 「好きだ」 ということすら意識出来ない未熟な少年でしたが、こうして思うに、彼は明らかにカオルさんのことが好きだったようです。
 毎年この時期になると思い出してしまう、淡く切ない思い出でした。
 そういえばカオルさんのお父様は童話作家だったはずです。それを手がかりに探すのも良いかもしれません・・・。て探したらカオルさん本人も、女優業のかたわらで童話を描いていることがわかりました。どど、どーしよう・・・。
 そろそろ家庭学習中登校のヒト達も減ってきました。つまらん。皆早く学校来いっての。 


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