ZP07 08月03日

『花』いつかまた咲け。

 こんな私(ってーどんなワタシだよ)でも、「あ”ー、もうアタマ使ったり他人のこと考えるのは疲れちゃったな・・・」なんて思い、ほんの一時期、教職から離れていたことがあります。面白いことに、しばらく離れていると「でもやっぱりな・・・」なんてことを考えてしまうのがヒトってものなのでしょうか。急に求人情報誌を買いあさり、教育関連の求人を探していました。
 進学塾がいくつか目にとまり、「うーん、塾か。夕方から飲みに行けないけども、深夜から朝まで飲めるし、いっちょ採用してもらうかな・・・」なんて思いで当時住んでいた浦和付近の、とある塾の面接に行きました。数日後に始まる春季講習から、講師兼社員として働くことになりました。就職も決まり、暇をもてあましていたので、後輩たちの顔を見ようと大学に遊びに行き、そのついでにお世話になった就職課にも顔を出しました。
 「あ、斎藤君久しぶりー。こんな時期だけど、桐生の学校から募集がきてるよ、どう?」 「きりゅー?何処それ?」 「群馬県だよ、ぐ・ん・ま!」 「ぐんまぁ〜?ヒト住んでるんですかそこって。高校?」 「そう、野球がちょっと強いらしいけど、結構荒れてるって噂」 「あ、それは大丈夫です。私の高校は神奈川でも一番悪いようなトコでしたから・・・、へんな子いてもやっつけちゃいますよ。私のほうが絶対荒れてます」 「じゃー、行ってみる?」 「駄目でもともとで受けてみますよ・・・・・・」
 なんて会話があって、3月の末、あれとあれよという間に採用が決定することに・・・。塾にはアタマを下げて、採用を取り消してもらうようにしました。その代わりココの初任者研修ぶっちぎって、塾の春期講習をしっかりとやらさせてもらいました。毎晩のように呑みに行き、塾長始め、バイトの学生達と、教育や社会情勢について明け方まで語るという、熱く濃い一週間でした。酔っ払うと飲み屋から塾に戻って、ギター抱えてまた語る塾長が好きでした。たった一週間の付き合いから、もう10年も経ってしまってます。
 そんな塾長が見つけた素敵なライブハウスが閉店してしまうとのこと、仲間数人集めて、急きょアコースティックギターだけでのライブを企画した塾長がいました。連日出勤の中、一旦は行くことをあきらめていた私がいたのですが、昨夜は帰宅して腰を落ち着けることもできず、「やっぱり行かないと気がすまない」と、行ってきました。15年続いたという『花』という店は、素敵な店でした。若い頃は女優だった可愛らしいママさん、コンクリートむきだしの店内の壁に、これほどまでに響くか、と、いわんばかりの金属的なギター弦の音色・・・・・・、それでいて温かい。
 私がやっと知ったこの素敵な店が、今夜で最後の「営業」なのか、と思うと悲しくなりました。もっと早く知っていれば何度も何度も足を運んだのに・・・、今日はしきりに笑顔を作っているけど、少し悲しげなママさんの手伝いが何かできたかもしれないのに・・・、周りにいる全く知らないヒト達とも知り合いになれたかもしれないのに・・・・・・と。
 それでも良かったのは、こんなに素敵な店があったという事実を知ったこと、そしてその店の最後の日に接することができたということです。また、その場に集ったヒト達の温かさに触れることができたのも、大きな収穫でした。
 コレをこうして書いている今は、もうヒトを包み込むような温かい『花』という店は存在しないのだな、店内に歌声が響き、煌々(こうこう)と灯りがともる『花』はないのだな、と思うと悲しさ倍増です。
 塾長達が披露してくれた歌に関しても、たくさんの思いはあるのですが、今日は紙面の都合上ここまで。もうこういった思いをせずに済むように、この夏はバリバリ飲み屋の開拓にチカラを入れようと思ったヒゲ斎藤でした。
 諸君のお勧めの店、教えてくれっつーの。あ、飲み屋じゃないよ。


目の前の花に、あなたにしかわからない美しさを見いだすように、あなたのまわりの美しさを、ひとつひとつ見つけてみて。そのとき、あなたはもっと美しくなれる。

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