足利市立美術館でのザ・キャビンカンパニー展の日々を担当学芸員が振り返ります。
9月6日(金)
ザ・キャビンカンパニー展開催に向けて、巡回展前会場の平塚市美術館から、4トントラック6台分という、たいへん物量の作品がいよいよ届きます。今回のザ・キャビンカンパニー展で輸送・展示を担う日本図書輸送株式会社によるトラックの大船団(大車両団?)は、平塚市美術館を8時過ぎに出発し、11時過ぎから順次足利市立美術館に到着。ダンボール箱に梱包された状態で、3時間ほどをかけて館内に運び込まれました。
9月7日(土)
前日の搬入作業に続いて、朝から展示作業が行われました。ダンボール箱から取り出された作品は、展示予定をしている場所の床に次々と下ろされていきます。ザ・キャビンカンパニーの阿部さんと吉岡さんのお二人も、大分から始発の飛行機に乗って、午後から作業に合流。展示業者は、立体作品を開梱・仕分けするグループと、300点におよぶ絵本原画群を取り扱うグループに分かれて、黙々と作業を進めていきました。
展示準備中の様子。展示室2の《明日の門》の頭部が床に置かれている。
絵本原画群の展示準備中
9月8日(日)
展示作業は、今日からいよいよ立体作品の組み立て、絵本原画群の壁への飾り付けなど、作業が本格的に行われていきます。足利市立美術館のスタッフのほか、巡回展の他会場である平塚市美術館、千葉市美術館、大分県立美術館の各担当学芸員も、今日から翌日にかけて朝から作業に加わり、ガラスケース内や展示台など、比較的細かな部分の展示作業を行っていきます。
《明日の門》の設置現場
テントの組み立て中
展示作業を見守るザ・キャビンカンパニーの二人
9月9日(月)
ザ・キャビンカンパニーさんが加わっての展示作業二日目。一日かけて、展示の一つ山場である立体作品群の設置のほか、各章の展示がだいたい終わり、午後からは、足利市立美術館のスタッフによってライティングの作業も進められ、もう一つの山場である絵本原画群も完了にいたりました。一日の作業終了後には、展覧会開幕前の9月12日に予定されている、足利市立大月小学校が来館して鑑賞授業の打ち合わせが、教頭先生と展示会場を回りつつ行われました。
9月10日(火)
輸送・展示業者による展示作業最終日、作品のデータが印字されたキャプションが取り付けられるなど、部屋ごとに展示の詰めが行われ、午前中にはほぼ展示が完成。午後からは、ライティングの仕上げとともに、梱包材料や資材などの後片付けも進行し、17時までには業者も引き上げていきました。また、ザ・キャビンカンパニーの吉岡さんは、いったん帰宅するため空港へと向かいました。
9月11日(水)
搬入〜オープニングイベントの10日間では、唯一大きな出来事のない一日。足利市立美術館のスタッフは、ザ・キャビンカンパニーの阿部さんとともに、映像機材の調整など、黙々と展示の詰めを行っていきました。同時に、前日の10日より、ミュージアムショップで販売される絵本やグッズなど、大量の商品が続々と届き、ショップにダンボール箱が積み上げられていきます。
9月12日(木)
午前中、足利市立大月小学校の5、6年生、計 24名が4名の先生が来館し、展示室をめぐりながらの鑑賞授業が行われました。展覧会の開幕を控えて足利に残っている阿部さんの自己紹介から始まり、展示の順路に沿って4つの展示室を、足利市立美術館での展覧会にとって初めてのお客さんでもある子どもたちとともに、阿部さんが解説をしながらめぐっていきます。中でも子どもたちの心を強くとらえたのは、ダイナミックかつドラマティックに展示室2の空間を占める、第三章「アノコロの国」の立体作品群でしたが、そのほか、ポケモンなどのキャラクターとのコラボレーションのパート第四章「ならばの脱皮」や、自分の影絵がアニメーションと重なる第二章「オボロ屋敷」なども、子どもたちに人気のあるパートでした。最後の質問コーナーの後には、阿部さんから、美術を学ぶことに対する思いも語られ、一時間半ほどの鑑賞授業が濃密に行われました。
こうしてプログラムを実施している間に、だんだんとミュージアムショップができあがっていきます。
足利市立大月小学校の鑑賞授業より
9月13日(金)
昨日の大月小学校の鑑賞授業に続き、朝から、群馬県との県境に位置する足利市立矢場川小学校にザ・キャビンカンパニーの阿部さんと出向き、2時限にわたって図工の特別授業が行われました。今回対象になったのは2年生19名。3時限と4時限にわたって一時間半ほどの授業になりました。授業は、電子黒板を使って画像を映しながら、阿部さんが活動の紹介をした後、電子黒板でページを表示しながらの絵本の読み聞かせへ。一冊目は、『しんごうきピコリ』と『ダイオウイカのいかたろう』の2冊から、子どもたちに選んでもらった『ダイオウイカのいかたろう』で、途中でイカダンスも交えて全員からだを動かしながらの読み聞かせでした。2冊目は、ダイナミックな絵と一分ごとに進む時間が聴くものを引きつける『がっこうに、まにあわない』。子どもたちが絵本に対して十分に心を開いたのを見計らって、いよいよ絵本づくりへと向かいます。最初はザ・キャビンカンパニーがつくった「わたしのすきずかん」という、「すきなにおい」、「すきなあそび」、「すきなたべもの」、「すきなおと」、「すきなきせつ」、「すきなてんき」、「すきないろ」、「すきないきもの」、「すきなじゅぎょう」の9つの質問をそれぞれが埋めていくワークシートを行い1時限目が終わりました。
2時限目は、ザ・キャビンカンパニーさんが雛形の文を用意した「わたしのはらっぱ」という新たなワークシートに、前の時間で記した「すきないきもの」、「すきないろ」、「すきなおと」、「すきなにおい」を書き写して絵本1ページ分の文章を完成させつつ、このページとは左右一対で見開きになる原っぱの絵に、鉛筆やクーピーで描き加えていくという行程に移ります。途中で何人かに完成した文を発表してもらう時間もはさみ、最後は絵本の表紙になる部分にもタイトルや自分の名前を自由に描いてもらって、19名それぞれの絵本ができ上がりました。
足利市立矢場川小学校の特別授業より(一番下は実際に使用した「わたしのすきずかん」のワークシートです)
午後は15時から、監視員の方たちや美術館の職員を対象にした展示解説会が行われ(来館者への質問などに答えるための重要なものです)、さらに17時からは内覧会へ。阿部さんにロビーで一言お話しをしていただいた後に、来場者と展示室をめぐりながらのトークが阿部さんによって行われました。
監視員・職員への展示説明会より
内覧会より
9月14日(土)
いよいよ展覧会開幕です。会場前から数十名の方に並んでいただきました。14時からは展示室階下の多目的ホールで、早くから整理券獲得のために並んでいただいた81名の方にご参加いただいてのオープニングトークが行われました。トーク会場は、前半はウレタンマットを敷いて子どもたちが直に座れるように、その周りと後ろ半分には折りたたみ椅子を50 脚ほど並べて構成されました。大分を始発の飛行機で出ながらも、途中電車の不通というアクシデントに見舞われた吉岡さんも、トーク5分前にぎりぎり間に合い無事に始まったトークでは、プロジェクターで活動や今回の展覧会の成り立ちなどが紹介された後、絵本の読み聞かせへ。イカダンスを伴っての『ダイオウイカのいかたろう』、『しんごうきピコリ』、『ミライチョコレート』、『ゆうやけにとけていく』の読み聞かせが行われました。さらにトークは続き、最後の質問コーナーを含めて一時間の濃厚な時間が過ぎていきました。
トークに続いて、同じ会場の仕様を変えて、トークと同じく早くから整理券獲得のために並んでいただいた100名ほどの方へのサイン会が、2時間ほどかけて行われました。
展覧会がオープンしました
オープニングトークより
初日のサイン会より
9月15日(日)
展覧会2日目。今日はお子さんずれの家族は全員が入館無料になるという「家庭の日」で、ご家族連れを中心に、開館前に50名以上の方に並んでいただいての開館となり、開館直後には100名を超える方が観覧されるという賑わった展示会場となりました。14時から行われたアーティストトークは、ザ・キャビンカンパニーのお二人が解説をしながら展示室をともにめぐっていくというもので、果たして全員展示室に入れるかどうかという危惧がありました。トークが始まる時間には、出発点の受付ロビーは130名という多くの参加者であふれました、何とか展示室1に全員収まり、お二人のトークが無事に始まりました。トークは、初めて伺うお話も含んで徐々に熱気を帯びていきます。こうしている間にもさらに人が増えつつ、階上の展示室2からロビーを経て、最後の展示室3へ。最後の質問コーナーまで、今日も一時間の濃厚な時間が過ぎていきました。
ギャラリートークより。この熱気をご覧ください。
トークの後は、今日も多目的ホールでサイン会が行われ、やはり早くから整理券獲得のために並んでいただいた100名ほどの方へのサイン会が、2時間ほどかけて行われました。さらに閉館後は、地元コミュニティFMの「FMだもの」によるインタビューの収録が展示室で行われました。
2日目のサイン会より
9月16日(月祝)
ザ・キャビンカンパニーさんは、朝から次の巡回展会場の千葉市美術館に朝から向かわれ、その後大分に帰宅されます。9月7日から10日間にわたって続いたザ・キャビンカンパニー展の展示〜オープニングがひとまず終了したことになります。特に阿部さんは足利に9連泊されたことになります。吉岡さんもその間大分〜足利を2往復で、たいへんお疲れさまでした。この3連休の入館者は、14日が262名、15日が516名、16日が160名の計938名。一つの目標の1,000人にはやや届きませんでしたが、足利市立美術館としては、通常の展覧会よりは多くの観覧者に来ていただくことができと思います。展覧会はまだ始まったばかり。これからどんな物語が展示室で展開していくでしょうか。
今日はミュージアムショップの様子をご覧ください。それぞれの商品の紹介は別の機会とさせていただきます。しばらくお待ちください。
10月5日(土)
展覧会が始まってまもなく3週間が経ちます。会期半ばのイベントとして、担当学芸員による「鑑賞ワークショップ」が開催されました。これは展示解説を順に行っていくギャラリートークとは少し異なり、作品の中から4〜5点をえらび出し、それらについて参加者の方たちに質問をしつつ、作品を前にして互いに会話をしながら会場をめぐっていくとうものです。参加者はお子さんからシニアの方まで10名ほど。今回は、一点の作品をじっくりと見るということが難しく、展示室1と3では通常の展示解説をしつつ、展示室2の第三章・立体作品群と、第5章・絵本原画群のとことろで、事前に用意した質問を一つずつするという形式にしました。
その内容は、まず、第三章立体作品の中で、壁一面に設置された膨大な原画の中から、一番最初に目に入ってきた作品について、第一印象や。どこが気にかかったかをお話しをしてもらうということ。それぞれの質問について、まず一番目に話をしてくれたのはお子さんで、さらに、皆さんに一人ずつ伺いましたが、もともとザ・キャビンカンパニーの作品を知っている方も、初めて作品や絵本に触れる方も、インスピレーションをもとに、自由にお話していただけたのではと思います。
展示室2・第三章「アノコロの国」での鑑賞ワークショップの様子
〒326-0814
栃木県足利市通2-14-7
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