趣味将棋事始

なぜ歩の裏は「と」なのか

将棋の駒に記される駒名の書体や「と金」の「と」の意味についてです。

将棋駒の書体

将棋駒の表には二文字で駒名が記されていて、伝えられる書体には、楷書、行書、草書、篆書、隷書があります。ちなみに、テレビなどで使われる一文字の駒は、大山康晴十五世名人の考案によるものなのだそうです。

駒の文字は平安時代から能筆家が書き、江戸時代には代々能筆家を輩出した水無瀬家が駒の書体の宗家とされ、その駒は「水無瀬駒」として珍重されました。

有名な書体は、江戸時代前期にはほかに後水尾天皇宸筆になる「錦旗」があり、江戸後期には「源兵衛清安」「金竜」「真竜」「安清」「巻菱湖」「董仙」「小野鵞堂」などがあります。

駒の裏の文字

将棋は玉将(王将)と金将以外の駒は、敵陣に入ると成ることができ、駒を裏返して呼び名も変化します。

「金」の崩し字

銀将、桂馬、香車、歩兵は成ると、金将の性能になります。成り銀、成り桂、成り香の文字はすべて「金」の崩し字です。

「と」は「金」または「今」

歩の裏名「と」も金の崩し字といわれていました。しかし近年、中世以来同音の字を代替して使うこともあったことから、「と」は「金」と同音の「今」の崩し字という説が出現しています。

参考資料
  • 窪寺紘一『日本将棋集成』人物往来社, 1995